電子講義:量子グラフの理論序説

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量子グラフ理論序説:量子特異点の物理(5-3)

双対性と非ホロノミー 3

いままた粒子が線上を運動する系を考える。一般化点状相互作用をx=0 におくが、ここでは時間反転不変性を要求してキ= 0 と置く。今回は離散スペクトル系を作りたいので、粒子はx = L1 と x = L 2 で跳ね返るとする。(ここではこれを両端はディリクレ条件で表せる、と解釈する。)するとエネルギー固有値 E = k2 は次の式でもとまる

a sinkL1coskL2+a coskL1sinkL2+b/k sin kL1 sin kL2+d k cos kL1 coskL2
(5.5)

系は4パラメタ1拘束条件で本質的に3パラメタで、まだ取り扱いが大変なので一つをたとへば c を c = c 0 と固定する。そして二つのパラメタ a, b の関数

E= E(α,β)
(5.6)

としてエネルギー平面の図を描いてみる。殆どの部分では単に平面が波打っているだけだが、特別な点がいくつかあってその周りに興味深い構造がみられる。そのような一部を切り出してきたのが図1である。何か中心に特異な点があってその周囲を状態が螺旋階段状に登っていくのが見て取れる。見るとこの螺旋階段は二重になっていてほぼ180度対称に近い型をしている。この特異な中心点とは b = 0、 a = 1/c 0 でこの点では(18)式の d が不定になり、この点に限ってエネルギー E は a, b 2つのパラメタでは書けないのである。

このような構造が何に使えるかを考えるのは、現段階ではまさに白昼夢にしか過ぎないだろう。しかし近未来に「量子操作工学」というものが確立した時点では「量子サイクル」、「量子機械」、「量子断熱冷却」などがありうると思うのは心楽しいことである。

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