電子講義:量子グラフの理論序説

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量子グラフ理論序説:量子特異点の物理(3-1)

パラメタ空間の幾何学1

点状相互作用に通常知られたデルタ関数型以外のものがあるとして、4パラメタからなる全体はどのような様子で、その中にいったいどんな秘密が隠されているのだろうか。この途方に暮れるような疑問に答えるには少々高級な数学が必要となる。ここでは位相幾何学的な観点から「非自明」な4次元球面構造体 U(2) で表されたパラメタ空間の様子を探ってゆく。まず指摘されるのはパラメタ空間上の基本要素というべきパウリのスピン行列の役割である[5]。いま波動関数上に次のような3つの変換を考える。



(3.1)

最初の P1 は左右を交換するパリティ演算に他ならないが、Pi2 = 1 の関係から判るようにP2、P3 も含めて「一般化されたパリティ変換」と呼ぶべきものである。興味を引くのは直接簡単に確かめられる関係 で、これが成り立つ原因はこれらの変換がヴェクトル Φ 、Φ' には

(3.2)

として作用することで明らかになる。

ここまでで示したことは、実軸上の複素関数で、一点 x=0 以外では滑らかで、x=0 では「量子流速を保存する範囲で不連続性が許される」というものの空間全体を考えると、その空間上にスピン代数SU(2)が実現される、というきわめて注目すべき事実なのである。

さて三つの実数 c1 、c2 、c3 ( )をもちいて変換 をかんがえる。これに応じて を考え と同時にU にも次の変換

(3.3)

を加えると、点状相互作用の性質を決める基本式(2.6)は維持されるので、U' もやはり点状相互作用を記述している。ところがこの関係を と書いてみると、実は U と U' は同じスペクトルを持つ点状相互作用だという決定的な事実に気が付く。なぜならば、HU の固有値 E の固有関数を |ψ>と書くと、HU' P|ψ> = P HU |ψ> = E P |ψ> となり、これは P |ψ> が HU' の同固有値の固有状態である事を示しているからである。

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