電子講義:量子グラフの理論序説

全卓樹

[電子講義集] [全HP]
[Index][ch0][ch1][ch2][ch3][ch4][ch5][ch6][ch7][ch8]
前へ 次へ

量子グラフ理論序説:量子特異点の物理(5-1)

双対性と非ホロノミー1

デルタとエプシロンの境界条件を見ていると、何かしらの対称性が予想される。先ず注目すべき点は、デルタ函数ポテンシャルは対称状態のみに作用する事である。対してエプシロンの境界条件は対称波動函数には作用せず、反対称状態のみに影響がある。

この事実を二つのスピンの無い同種粒子の問題に適用すると重要な事実に気づく。つまりいま x を二粒子間の相対座標とみなすと、相対波動関数が対称な二つのボソン間ではデルタ相互作用はあってもエプシロン相互作用は無く、逆に反対称なフェルミオンの間ではデルタ相互作用は無効果でエプシロン相互作用のみが作用する、ということになる。これは「デルタ相互作用」というのが1次元ボソン間の短距離力の一般的な1パラメタ表現であるのと平行に、「エプシロン相互作用」とはスピンの無い1次元フェルミオン間の短距離力の一般的な1パラメタ表現であるということを意味する。さてデルタ、およびエプシロンによる二体散乱問題を見てみる。散乱行列をSとすると散乱波動函数はx 正負の領域で



(5.1)

のように書ける。ここで複号は、+がボソン(対称散乱)に−がフェルミオン(反対称散乱)に対応している。 記号k は粒子の相対運動量である。これを x = 0での接続条件からSを求めると先ずボソンの場合

 ; 
 ; 
(5.2)

となり、フェルミオンの場合は

 ; 
 ; 
(5.3)

となる。ボソン間にエプシロンが無作用、フェルミオン間にデルタが無作用なのは前述の通り当然の結果である。驚くべきなのはデルタによるボソン散乱とエプシロンによるフェルミオン散乱は、もし両方の強度パラメタが

(5.4)

で結ばれた場合全く同様であるという事実である。点状相互作用で結ばれた同種粒子二つを考えると、強結合フェルミオン系は弱結合ボソン系と、また弱結合フェルミオン系は強結合ボソン系と物理的に同等なのである。

行先: 研究のページ
copyright 2005
全卓樹ホーム 教育のページ
t.cheon & associates